札幌高等裁判所 昭和26年(う)426号・昭26年(う)425号 判決
記録を調査すると、原審第一回公判調書には、検察官の請求によつて他の証拠と共に「吉田矢の司法警察員に対する第一回供述調書謄本一通」を取り調べた旨の記載があり、原判決は右供述調書謄本一通を証拠として挙示しているのに、記録に編綴されているのは、右供述調書の写に過ぎないことは所論のとおりであるが、記録に表われている審理の経過に徴すと、原審で証拠調を為し、且つ証拠として引用したのは右公判調書の写であつて、右公判調書及び判決調書に謄本とあるのは、その誤記であることが容易に看取せらるるのである。
しかも、右供述調書の写が現実に存在し、且つそれは刑事訴訟法第三百二十六条第一項の規定によつて、本件において証拠能力を有するのであるから、原判決が虚無の証拠を断罪の資料に供したものと断ずるを得ないことは明らかである。従つて論旨は理由がない。